第12章 厄介ごとが押し寄せる

有村菜津美は、自分がああ言えば工藤達央はさすがに動揺する――そう確信していた。

ところが、予想はあっさり外れる。

工藤達央はまるで腰が浮く気配もなく、ひどく落ち着いていた。波ひとつ立たない表情。先ほどから、まぶたさえ持ち上げない。

菜津美は眉をわずかに寄せる。――変わった。いや、最初からこんな人だったのか。急に、見知らぬ相手を見ているような感覚が胸に刺さった。

「菜津美。こんなガキと離婚するって決めたの、ほんと賢いよ」

「見ろよ、この貧乏くさい格好。全身、安物の寄せ集めじゃねえか。こんな屋台で、こんな安っぽい焼き鳥食ってる時点で終わってんだよ。最後は野垂れ死にだな」

「こんな貧乏...

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